2026年4月12日(日)

何でもない日曜日である。
どこか遠くへ行きたくて、東上線のときわ台駅に来てみた。券売機に向かい、東上線と秩父本線の一部が乗り放題となる「SAITAMAプラチナルート乗車券」を買った。あてもない旅だが、このまま東上線を北上することにした。

ホームに滑り込んできたのは、東上線の生え抜きである9000系。7時14分発の池袋行。
今や風前の灯火となった、電機子チョッパ制御特有の「プー」という音が床下から聴こえてくる。池袋に到着すると、列車はそのまま準急川越市行になる。私はそのまま身を委ねる。

川越市で8時30分発の快速急行に乗り継ぐ。
車内を見渡すと、大きな荷物を背負った登山客の姿が目立つ。車窓には、徐々に武蔵野の瑞々しい緑が広がり、重い雲は晴れていった。

小川町で向かいのホームに止まっている寄居行に乗り継ぐ。東上線の末端区間は今も8000系が頑なに守っている。9時09分に発車。

寄居で秩父鉄道に乗り換える。元東急8090系が来た。この路線では最大勢力を誇る車両である。9時31分の影森行には、行楽客と地元の客が半々くらい乗っていて、3両編成の座席はほどよく埋まっている。

私は秩父鉄道には何度も足を運んでおり、ほとんどの駅で降りたことがあるが、わずかに塗り残している駅もある。そのひとつ、秩父駅のひとつ手前にある大野原駅で降りてみた。

当駅には交換設備を有する対向式ホームがある。静かな無人駅だが、列車が来ると片手では数えきれないくらいの乗降がある。

やがて古い構内踏切が鳴動する。列車の音が山に反響して聴こえてくる。10時27分発の三峰口行でさらに先を目指す。

御花畑駅で下車。日曜日とあって、駅周辺はすでに多くの観光客で活気づいている。

出汁の匂いに誘われて、駅前の立ち食い蕎麦屋に入る。
注文したのは、秩父特産の「しゃくし菜漬け」をあしらった一杯。もっさりとした昔ながらの茹で麺に、しゃくし菜の塩気と酸味が絶妙に絡み合う。

さて、腹を満たし、10時58分発の長瀞行に乗る。車両は西武から直通の4000系である。秩父鉄道線内の普通列車では珍しくクロスシートを備えている。
車窓を流れる景色を眺めながら、次なる下車駅を時刻表と睨みながら探したが、巡り合わせの悪さゆえ、またしても大野原駅で降りる羽目になってしまった。

しかし、退屈する間もなく反対方向の列車がすぐに来る。11時11分発の三峰口行に乗る。

列車は荒川を渡る。視界が開けて車内が明るくなる。

やがて隣の秩父駅に着いた。行き違いのためしばらく停車していると、対向のホームに元都営三田線の6000形が来た。
今や極めて希少な同車だが、中でもこの第2編成は落成当時の赤帯を纏う復刻仕様である。せっかくなのでこちらに乗り換える。
車体側面に並ぶ艶やかなコルゲートが、秩父の日を反射して、ぎらりと輝いている。11時20分発、至高のステンレス車体がゆっくりと動き出す。

1時間ほど揺られ、こちらも未訪問だったふかや花園で降りた。当駅は2017年に開業した、秩父本線で最も新しい駅である。
コンクリートも真新しい近代的なホームから、武骨な老兵が走り去っていく。見えなくなるまでその姿を見送っていた。甲高いモータ音と重厚なジョイント音だけが平野の空に響いていた。

駅前には大型商業施設が広がり、地方のローカル線には珍しく若い乗客の姿が目立つ。そんな賑わいを背に、12時48分発の影森行に乗り込み、来た道を折り返す。

揺られること数分で寄居に戻ってきた。ここから再び東上線を南下していく。まずは13時18分発の森林公園行である。途中の小川町で部活帰りの高校生が乗ってきて、4両のワンマンカーはにわかに超満員となった。

森林公園で快速急行に乗り換え、坂戸で降りた。ここからは未乗のままだった越生線に乗ってみる。車両はここでも8000系の4両である。14時19分発の越生行は、それなりの乗車率で走りだす。

終点の越生には20分足らずで着く。最近のローカル線ターミナル駅の流行に倣って、新しい和風の駅舎である。

越生線は東武の支線としては運行本数が多く、日中でも15分間隔で走っている。せっかくだからこれを有効活用して、いくつかの途中駅にも降りてみることにした。14時54分に越生発。

二つ隣の東毛呂駅で下車。駅周辺はいたって普通の住宅街という雰囲気である。

15時03分発の下りで一駅戻る。

この武州唐沢駅もいかにも東武の小駅という佇まいで、モダンながら簡素な造りである。

15時11分発で坂戸に戻る。かつてのツートンカラーを復刻した8000系が来た。

坂戸で待っていたら9000系が来たのでこれを捕まえた。15時38分発の森林公園行で東松山へ。

その折り返しを待ち、東松山から一気に南下する。Fライナー快速急行の元町・中華街行である。かつて東上線の地下鉄直通といえば普通列車ばかりだったが、いつの間にか優等種別を掲げる便が増えた。

せっかく綺麗な日が出ていたので、上板橋に寄って10000系を撮影してみた。東上線には、今なおリニューアル工事が施工されていない車両が残っている。新型車両が投入されるらしいから、彼らはこの姿で生涯を全うするのかもしれない。
私はカメラを下ろす。西日に照らされた電車が、一瞬だけその春陽をかえして走り去る。
おわり



































































































































































































































